「焼香」「マナー」で検索すると出てくる言葉があります。
それは…「お辞儀」
「焼香の順番が来たら、ご遺族に一礼します」的なことが書いてありますねえ。
それでは、お聞きください。

焼香で お辞儀するの、やめて…
……詳しく説明しますね!
実はスタッフやお坊さんに「やめてほしい」と思われているのだ!
前提として「地域や状況により異なります」ご容赦くださいね!
例を挙げれば…
社葬や大規模葬においては「焼香でのお辞儀」が必要になる場面もあります。
また社葬に限らず、指名焼香で呼ばれて一人ずつ進む場合も「お辞儀」は必要になります。
(アナウンス後『ご紹介にあずかった●●です』というような意味合いになるため)
しかし!
ご指名の焼香が必要ない
一般的なご葬儀においては…
ご焼香のお辞儀はデメリットばかりなのです!
葬祭の現場スタッフやお坊さんからも
「みんなお辞儀してるけど…
実はアレ、やめてほしい」
との声を、何度も聞きました。
申し訳ないですが…
私自身も葬祭スタッフ時代から
ずーっとそう思ってます。
中部地方の某県で半分以上の土地を回りましたが…
どの場所でも言われてました。
法話で「焼香中のお辞儀やらないでね」って
堂々と仰るお坊さんもいるくらい。
何がそんなに嫌われているのか…
ぜひ現場の声をお聞きください。
デメリット① 接触や怪我の原因になる
焼香台に向かう前。
お辞儀する人「あるある」なのが…


座ってる人の目の前にお尻を近づけちゃってる。
下手すると尻が当たっちゃってる。
座っている人に不快感を与える…というのはまだ軽いほうです。
・お尻が隣に並んでいる人に当たり、転ばせてしまう
・隣の人もお辞儀して、タイミング悪く頭同士がぶつかって怪我をする



私、それで転ばせて怪我をする瞬間を
実際に何度も目撃してます!
頭同士もニアミスだったけどありました…
勢いがあって危なかった…
私が「焼香のお辞儀」を辞めてほしい
一番の理由はこれです。
不慣れな環境でテンパってしまい、
周りが見えなくなってしまう方も非常に多い…
怪我をするリスクを背負ってまで、
お辞儀はしなくてもいい!
と私は思っています。
デメリット② 時間が掛かる→お式のお経は時間制限が!
お経には「限り」があります。
参列者人数に合わせて、お経の種類や焼香のタイミングを変えています。



人数が多ければ…
早めに焼香案内をしてますね。
司会者や葬祭スタッフはお寺様(お坊さん)と
打ち合わせでタイミングを把握し
「出来れば決められたお経が終わるまでに
焼香案内を終えるようにする」
というミッションが課せられています。
もちろん、お経の最中に焼香が終わらなければ
お坊さんがお経を追加してくれるのですが…
ご焼香の前後に、
あちらにお辞儀、こちらにお辞儀して…
すると、ご焼香の流れが滞りがちに。
その分 後ろの方はお待たせして、
お式は長引き、参列者にもお坊さんにも
負担がかかります。



終了時間が大幅に遅れると…
食事提供や持ち帰り品などに
影響が出る式場もあるんです…
スムーズな遂行のためにも、
後ろを振り返ってのお辞儀は
割愛してもいいと私は思います!
デメリット③ 故人への思いが一番なのに…
これは実際にお坊さんが法話でお話していた内容の詳細です。


頭を下げるべきは、仏様(故人)が一番です。
今日このようにご葬儀の場を設けたのは、亡くなられた方がいるからです。
ご遺族が参列者に、また参列者がご遺族にご挨拶するのは、お式の前後に出来ますよね?
お式の最中は、やはり祭壇に飾られている故人へ心を一番に向けてほしいのです。
ですから、ご焼香の前後に何度もペコペコ頭を下げることはやめましょう。
焼香の前後に、仏様(故人)に向かって
深く一礼してください。
他は「お互い様」ですよ。
どうしてもお辞儀したいのなら、お式の後にお願いしますね。
ちなみに…
このご法話、別の地域のお坊さんから
似たような内容で何度か聞いたことがあります。



「お辞儀しなきゃ!」という
思いに囚われすぎて、
お弔いの心が疎かにならないようにしましょうね。
でもメリットもあるのでは?



うーん、メリットかあ…
しいて言うなら…
「その場で、丁寧に挨拶できる」 くらいしかないです。
それいいじゃん!という方もいらっしゃるでしょうし、そういう地域もあるでしょう。
……しかし考えてみてほしいのです。



そのお辞儀…
理由(中身)ありますか?
私は知っているのです。
ご焼香で並んでいるときに…



前の人が沢山お辞儀してる!
私もしなきゃ…
「前の人がやってたからとりあえずやっとく」と…
正直大した理由もなく、これだけで多方面にペコペコお辞儀ラッシュをする人たちを…
怪我をする・させるリスクを負いながら
焼香の流れを滞りがちにさせて
故人以外の雑念にもなりうる
「焼香のときのお辞儀」
しかも挨拶はお式の前後にもできる。
…メリットと比べて、デメリットが多すぎませんかね?
じゃあどうすればいいの?
【持論】頭を下げなくても失礼じゃない
これは断言できます。
『お辞儀をするべき!』という地域や状況で、誤ってお辞儀しなかったとしてもです。
経験上「あの人、お辞儀しなかった!」などという方は、まずいらっしゃいません。
もしそう思われる方がいらっしゃいましたら、どうか思い直してもらいたいです。
大切な人が亡くなられているんです。
お心遣いできないほど余裕がないのだと。
実際に私が司会を勤めた事例をご紹介します。
臨月を迎えた奥様が、お腹の中にいるお子様ともども、残念ながらお亡くなりになりました。
喪主であるご主人は憔悴しきり、
お式ではご焼香もままならない。
当然お辞儀なんて出来る余裕はなく…
ご挨拶も代理で喪主のお父様が行うほど。
式中は生まれる予定だった子どもの
エコー写真を手にしながら
ぼうっとご遺影を眺めるだけでした。
そんな方に対して
「あの人、私にお辞儀しなかった!」なんて
あなたは思いますか?



相手を思うなら、
ホントやめてあげて…
参列者側も同じです。
その人にとって故人がどんな存在だったのか、
他の人には計り知れませんから…
「お辞儀しなきゃいけなかったのに…
ミスって忘れた!」
そんなあなたは、きっと亡き人のことで心が一杯だったことでしょう。
それがどんなに有難いことか…
どうかお気になさらないでくださいね。
そしてコロナ禍から「家族葬」が増えた
昨今のお葬式。
ご家族ならば、同じ立場同士。
輪にかけてお辞儀は不要だと私は思います。
どうしてもお辞儀したいなら…
お式の最中に式場へ到着し、
焼香が終わったら挨拶もままならず
帰らなきゃいけない…
そんな状況でどうしてもご焼香のときにご遺族へお辞儀をしたい方は…
ご焼香が終わった後、
次の方に場所をお譲りしてから
自席に戻る前に邪魔にならないところで
一礼するだけに留めましょう。
くれぐれも通路の妨げにならないように気を付けましょうね。
絶対NG!なのは…
お式の最中に遺族席に近づいて声をかけること!!
読経中の私語になるし、お式の流れが止まることも…



たまーにそういう人いるけど、
それ今じゃなくていいよね?!
ご遺族へのお声がけは…
お式の前後か後日にしましょうね。
【まとめ】焼香のお辞儀は絶滅させて良いと思う
↑過激な見出しになってしまいましたが…
マナー本などに書いてある内容って、
本当に現場の声やご遺族の心情を反映してる?
と思うことがしばしばあります。
(マナー本などを否定している訳ではありません)
葬儀スタッフ・司会者目線から
昨今のお式の現状を鑑みて書かせていただきました。
何度も書きますが…
ご指名の焼香など状況等により
「焼香のお辞儀」は必要になる場面もあります。
でも家族葬や一般葬においては、
デメリットが多すぎる!!
どんな立場の方も、まずはどうか
亡くなられた方のことを思ってご参列してください。
不行き届きは致し方が無いこと。
故人に免じてお許しいただきましょう。



お葬式は「心ここにあらず」になっても仕方ない状況…
お式で故人にしっかりと
心を向けられたのなら
お辞儀を忘れても気にしないでほしいです。